夏祭り落ちてはじけた水風船君のゆかたにピリオドがつく | 西崎 真希栄 |
手作りの菓子持ち訪ひたる研究室白衣の破れ君は気にして | 嶋寺 洋子 |
寝苦しきテント這い出て寝転びて星が降るよと君にメール打つ | 高橋 成 |
ひとりきりあなたの部屋で過ごす夜はゼリーの中のさくらんぼになる | 石原 啓子 |
わが羅針盤の針の指す君コンビニの前で子猫を抱き上げており | 綾音 たまき |
パラソルをたためば君の瞳に合ひぬかたみに白き髪そよがせて | 東利 志野 |
はりつめた空気に見ゆる白い息君との距離をはかるものさし | 高橋 佳子 |
君もいま彫りてゐますや微笑佛秋の夜更けて鑿のつめたし | 橋田 鈴子 |
掌から掌へ移す蛍のぬくもりを君は知らずか闇に放てり | 畑中 伯彦 |
サフランの咲きたることなど言ひゐしがついでのごとく逢はむと言ひぬ | 武藤 蓑 |
墓へ続くえのころ草の揺れやまず君への報告一つふえたり | 香村 哲子 |