木漏れ日をレースのようにまとったら結婚式はジーンズでする | 永澤 優岸 (神奈川県) |
油と鉄と機械だけ見て生きてきたあなたの笑顔に惹かれるまでは | 植村 大治 (福岡県) |
盗み見たサーフボードを抱えたる君の背中のすずしい窪み | 吉田 美子 (大阪府) |
怖がりの君の手を引き騙し絵のような月夜の林を歩く | 水谷 あづさ (奈良県) |
水道の蛇口にうつる君の顔ぞうきん洗う手がとまりそう | 斎藤 真里奈 (静岡県) |
大好きと言えない分だけ音にしたトランペットが夕陽をはじく | 山崎 史織 (岡山県) |
夫の力を大いに借りて寒風に二人で晒す切り干し大根 | 冨家 新子 (兵庫県) |
手慣れたるパスタのフォークくるくると君のペースで話がすすむ | 水本 有香子 (東京都) |
マトリョーシカ大きな私の中に居る小さな私も君に恋する | 高橋 知奈 (新潟県) |
なぜ僕が君だけを見ているかって?君が椿に似ているからさ | 屋宜 爽治 (沖縄県) |
じゃあ逆になんで一緒になったかと訊いてみたいが深そうな森 | 工藤 吉生 (宮城県) |
こんなにも好い日に『堕落論』を読むあなたを好きになりかけている | 合志 義文 (神奈川県) |
チョコフォンデュみたいに甘い感情が流れ出るから息ができない | 菊池 優花 (千葉県) |
やみそうにないねと言葉で鍵をかけあなたを閉じ込めている教室 | 豊田 知佳 (福岡県) |
傘寿会に生きて再び君と逢う胸の鼓動がきしみ鳴り出す | 加藤 繁秋 (岐阜県) |
人波をのがれて君を待つ砂丘しだれ花火の海に吸はるる | 河野 ひさ江 (千葉県) |
切り立ての髪にあなたが触れた時ピアスしようと突然思う | 村田 千賀子 (東京都) |
試着室みどりのスカート一回転若葉にまぎれ明日会いにゆく | 鈴木 梨恵 (埼玉県) |
木の下を歩く吾らにふんはりと羽衣かけるやうに合歓咲く | 寺田 惠子 (京都府) |
時々でいいから俺を夫だと判ってくれれば介護もたのし | 瀬戸 佐多市 (千葉県) |
キッチンで再生される豆苗の緑みたいに自生する恋 | 野崎 優志 (新潟県) |
告げ得ざる想ひのごとき黒揚羽掌に包みゐる晩夏の窓辺 | 田中 雅浩 (静岡県) |
眠る君ふれあう肩と揺れるバス私の心臓「次、止まります。」 | 三垣 慶明 (鹿児島県) |
好きだとは言えぬ昭和の男ゆえガス台の横コスモスを置く | 福永 行男 (鹿児島県) |
タテガミのもつれ優しくほぐす指君の愛馬の「ピノ」になりたい | 岩沢 峰子 (東京都) |
さよならと飛び出したい夜もあるけれど鯖が焼けたら大根おろす | 小林 さおり (東京都) |
たおやかな貴方の指ですくわれた金魚を夏の証人にする | 東 知子 (石川県) |
肺癌といわれて眠るきみを見てまだ泣けないと決めた折り鶴 | 村山 智栄 (東京都) |
「ねえ明日婚姻届を出そうか」と買い物袋を持ち直す君 | 原田 優美子 (石川県) |
青空と林と牛と君と吾と一枚の絵に閉じ込めて夏 | 中山 江梨子 (茨城県) |
懸命に握りしめてた風船を手放すようなさよならをした | 高野 夏実 (新潟県) |
「いかないで」言えない言葉のみほしたラムネのビー玉わざと揺らして | 金子 杏郁 (埼玉県) |
告白の言葉しばらく飲みこんでぼたん雪積む石段のぼる | 上西 辰弥 (和歌山県) |
夏休み二人は海で出会ったね砂のお城は波に流れた | 井上 利佳 (和歌山県) |
牧草のロールの上に二人乗り座って眺める水平線を | 佐々木 光輝 (北海道) |
試合中敵同士でも構わないあなたの闘う姿が好きです | 中村 矢珠子 (北海道) |
肩幅の広きベストに木洩れ日をたっぷりたっぷり編み込んでゆく | 佐藤 美弥子 (福島県) |
かさかさと落ち葉が泣いてるこんな日はあなたと飲みたい缶のお汁粉 | 徳田 智翔 (福岡県) |
あの山をいくつ越えたらあえるかな知らん顔した朝顔の花 | 福永 理佐 (京都府) |
照れながら二人で作った雪だるま私の中でいまだに溶けず | 田中 憩 (福井県) |
ぽんぽんと頭をなでて去っていく残されたのは私とリンゴ | 宇野 遥香 (福井県) |
蛍火のゆらぐ明りに手をのばしつかむその先君の手のひら | 永田 航一 (福井県) |
席替えで君の隣になってからあくびもくしゃみも不自然になる | 佐藤 織舞 (熊本県) |
「お互いによう働いたのう」亡きあとの君を恋ひつつ梨の果をもぐ | 後藤 信子 (大分県) |
街路樹の桂の木の葉はハート形一本丸ごと君に届けたい | 山口 幸代 (埼玉県) |
菜の花と遊んだだけの恋だった国民学校入学の頃 | 門倉 まさる (群馬県) |
菜の花に喩えてなんてくれたからわたしの今は春が切ない | 山田 満里子 (福井県) |
「もう冬の匂いがするね」と言う君と群青色の夜にいること | 杉野 真歩 (岡山県) |
あなたから教えてもらった一節が遠く離れて解る、今なら | 厨 真希 (大阪府) |
コスモスの可憐に見えてしたたかなあなたのことが割と好きです | 田中 亜紀子 (三重県) |
責められる父母に祖父母に木枯しに惚れた男に会うだけなのに | 市原 利恵 (埼玉県) |
ジャスミンが恋のラッパを吹きましたふたり出逢ったその瞬間に | 石関 恵子 (神奈川県) |
すぐ近くに住んでいるような顔をして君走り来る四〇〇キロを | 篠原 恵子 (鹿児島県) |
風が手に絡まるきっとこの風は僕が知らない君を知ってる | 阿部 圭吾 (千葉県) |
誠実で寡黙なきみの不誠実「サヨナラ」だけで扉を閉めて | 忽滑谷 三枝子(群馬県) |
二限目の授業を抜けて落ち合った実験林の下草は萌え | 菅野 公子(茨城県) |
君と一緒海に沈んでも構わないもう戻れない恋をしないか | チ・ムハン (中国) |
福井県立武生商業高等学校 |
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東京学館新潟高等学校 |
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和歌山県立有田中央高等学校清水分校 北海道別海高等学校 福岡県立小倉工業高等学校 |