雪が溶けるように春にはいなくなるひとにもとどけ、とどけはなびら | 酒井 拓夢(静岡県) |
恋人が「いい雨だね。」と微笑んでふいにリズムを持つ雨の音 | 田尻 由希子(三重県) |
くちづけの角度それからさよならと手を振る角度全てがあなたで | 野田 鮎子(東京都) |
大好きと言えない分だけ打ち込んだ竹刀の音が響く道場 | 尾上 龍馬(長崎県) |
「ただいま」の前に言おうと「おかえり」を用意して待つ夜勤の妻を | 渡辺 廣之 (大阪府) |
こんなにも楽しかったかブランコはすれ違う君すれ違う君 | 田曽 真由美(岡山県) |
放課後に肩を並べて君と行くコンビニだってテーマパークだ | 平林 やぶき(新潟県) |
どちらかをひけばたやすくほどけゆく蝶々結びのようなふたりね | 宮里 真依(沖縄県) |
放課後に道路にうつる影を見て意外と違う二人の身長 | 下迫 創太(愛媛県) |
最後の日失うべきは君じゃなく棚にあげてたぼくのプライド | 林 青空(大阪府) |
あと5分待つのが限度タンポポの綿毛に私なりそうだから | 合志 紗里衣(神奈川県) |
向かいから自転車を押すきみがくる畑のキャベツわさわさと鳴る | 福山 京子(神奈川県) |
恋人の「北ウイング」は聴き飽きて湿気たマッチを箱ごと捨てる | 星野 香織(千葉県) |
トルストイ読む横顔は垢抜けずああ誰もこの良さに気付くな | 石山 晴菜(愛媛県) |
「さよなら」が少し寂しい夕暮れに「またね」をくれた君が手を振る | 鈴木 紫音(栃木県) |
指跡を水蜜桃につけながら遠いあなたを憎みたい夏 | 引野 直子(兵庫県) |
濃紺の海も掬えば透明で気のせいじゃない君への好意 | 屋宜 爽治(東京都) |
君のこと大好きだから覚えたのそこは尺骨茎状突起 | 山田 みほ(福井県) |
封筒に入る体であったなら手紙の数だけあなたに会える | 壹岐 康生(宮崎県) |
観覧車のてっぺんで聞く「さようなら」街の夜景が海まで滲む | 佐藤 美弥子(福島県) |
「アイシテル」手旗信号送られて元特攻の君に嫁げり | 河野 ひさ江(千葉県) |
福鉄で帰る放課後二人きり距離を詰めたい人一人分 | 長谷川 侑希(福井県) |
二人乗りする時錆びた自転車の鳴く音二人で聴いていた夏 | 星 愛日(新潟県) |
告白に一つ首ふる君の事机の上の赤べこはじく | 黒川 海翔(新潟県) |
水切りを君と数えた河川敷コンクリートになるあの夏の日も | 近藤 啓太(新潟県) |
指先も染める藍染め藍の色爪の中まで君に染まって | 生野 帆乃花(新潟県) |
エルガーの「愛の挨拶」弾く指がリフレインする昨日の恋を | 石井 くるみ(新潟県) |
ぼくなりに大事にしてたでも君は雪の荒野へ攫われたがる | 尾内 甲太郎(静岡県) |
この恋は終わらないって思ってた頃のあけびが痛い。まぶしい | 渡邉 美愛(愛知県) |
映画化をしてもらうなら絶対にラストシーンにいてほしいひと | 澁谷 朝夏(神奈川県) |
笑いじわ私のために作ってよ蜂蜜のように微笑むあなた | 市原 利恵(埼玉県) |
すぐ行くと言つたよ海の見ゆる辺で三十年も経つてしまった | 夏目 雅代(東京都) |
一年に一度限りじゃ足りません、なので天の川埋め立てました | 中山 花(大阪府) |
自転車の補助輪はずすようにしてサヨナラをする君といた夏 | 新井 聡子(埼玉県) |
恋すると綺麗になると言うけれど綺麗な母はあまり見たくない | 立石 結菜(大阪府) |
好きなとこ、たとえばまずは喉仏 だめだ31字じゃ足りない | 小林 花綾(北海道) |
レコードの傷ある所で音が飛ぶ君の記憶に僕はいますか | 舘 栄一(福井県) |
本棚のスキマに見える君の顔手に取る本のバッハがわらう | 横尾 奏多(大阪府) |
何気ない仕草がスローに見えたならきっと私は君に恋する | 大久保 李南(福井県) |
ハンドルをぎゅっと握った初心者の彼は私の手には触れない | 金子 剛(熊本県) |
君と見た花火の横に飛んでいた小さく光る静かな蛍 | 末永 旺佑(千葉県) |
ひと夏の恋が終わった終電の車内に忘れた日傘のように | 木目田 美咲(神奈川県) |
教室で君から貰った不織布のマスクは今日も胸のポケット | 岩崎 壮太(新潟県) |
艶やかな音を出せっていう顧問「恋すればいい」僕はつぶやく | 長澤 和哉(新潟県) |
雨をよけパーカーを広げた秋の日の君の香りが私を包む | 桐生 彩羽(新潟県) |
シンデレラ私は黒いローファーで迎えに来るはず君を待ってる | 中倉 茉咲(新潟県) |
夏祭りヨーヨーのゴム切れた時こうだったって彼を思った | 木村 まり杏(新潟県) |
告白のパワースポット屋上はどの学校も立入禁止 | 戸川 鈴花(広島県) |
帰り道つなぐあなたの大きな手素振りでできたマメが増えてる | 桑原 亜蘭 (熊本県) |
夏の雨きつねの嫁入り空のにじ見上げる君とぬれた制服 | 富永 美都(沖縄県) |
踏切の警報音が心音のようでやっぱりあなたが好きだ | 秋田 花奈瑠(茨城県) |
話したら壊れてしまうぼくたちを夕陽がつつむ山の辺の駅 | 髙塚 潤(静岡県) |
水銀があふれるような夏でしたきみの遠くで鳴き終わる蝉 | 狩野 慶太(東京都) |
「だぃ、s、きだよ」電波が悪くて聞こえない神様そんなに嫉妬しないで | 橋本 祥之介(大阪府) |
佐藤から佐藤にかわる今日のわれ佐の書き順を変えて届ける | 古山 彩夏(東京都) |
アルバムを見ると昔の君がいる「一緒に遊ぼ」が君との出会い | 細田 陽彦(兵庫県) |
君のことあとちょっとだけ信じたい赤く染まったアネモネと空 | 渡邉 佳穂(埼玉県) |
にわか雨干しっぱなしの洗濯物みたいな2人の暮らしだったね | 米田 健斗(大阪府) |
あなたとのおとぎ話を始めよう千年先まで想いつないで | 野村 卓矢(神奈川県) |
東京学館新潟高等学校 |
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福井県立武生商工高等学校 |
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長崎県立上五島高等学校 千葉県立四街道高等学校 沖縄県立宜野湾高等学校 |